ここでは、ちまたでよく耳にする「抗酸化」についての幻想をエビデンスベースに深掘りしていこうと思います。
多くの人は、「抗酸化は何にでも効く!」と考えてしまいがちですが、活性酸素を効率的に除去して酸化ストレスの影響を減らすくらいの影響力でしかありません。
しかし、さまざまな問題解決に向かう可能性は大きく、これからが期待される分野でもあるため詳しく解説していこうと思います。
「抗酸化」のメカニズムや、今後の展開に期待している人には楽しめる内容となるでしょう。
抗酸化作用とは?
抗酸化とは、あらゆる物質が酸素との反応により生じた有害事象を減弱させるものの総称です。
ここでは主に体内で起こる抗酸化作用についてご紹介していきます。
酸素との反応で生じる物質に「活性酸素種(ROS)」というものがあります。これが、身体の抗酸化能を上回ると「酸化ストレス」という悪影響を及ぼします。
活性酸素を抑制する役割
活性酸素(フリーラジカル)はとても不安定な物質で、そこかしこにある物質から電子を奪い、自分を安定させようとします。
そして略取された側は、また別の物質から電子を奪いにいく…というネガティブループを繰り返し、「酸化」という状態になります。
抗酸化物質とは、この貧困状態を救う救世主のようなもので、自分の電子を分け与えて安定化させようとしてくれるものです。ゆえに、酸化に抗うため「抗酸化」と呼ばれます。では、活性酸素とは体に悪い物質なのでしょうか?
活性酸素とは?
活性酸素(ROS)とは、一般的に4種類あり、フリーラジカルとそうでないものに分かれます。
フリーラジカルとは、対をなしていない電子が1つ以上あるものをいいます。ゆえに、安定していないわけですね。
活性酸素は人間がエネルギーを生み出す過程で生じ、細胞伝達物質や免疫機能として働いています。しかし、これが過度に産生されて、体内の抗酸化能力を上回ると体にダメージを与えてしまうことになります。
現状、この余分な活性酸素がさまざまな病気の原因として考えられています。
抗酸化作用はがん抑制の効果がある?
では、ちまたでよく耳にする「抗酸化作用とがん抑制」について考えると、思っているほど単純な問題ではないことが伺えます。
一部で、「活性酸素を減少させると、がん予防になる」という報告もあれば、「抗酸化物質はがん予防に効果がない」という報告、むしろ「がんを悪化させる!」という研究も存在します。
もちろん、可能性がゼロではないですが、抗酸化を期待してサプリメントに頼るのは時期尚早であることは否めません。
それよりも、一般的に健康的な生活を送る、悪い習慣を改善することが最も有効な手段になると思われます。
抗酸化作用の主な3つの効果!
抗酸化作用には、活性酸素の発生を抑制させる働きがありますが、それ以上の効果については未だ発展途上であり明確なエビデンスは存在しません。
そのような中でも主だっていわれる3つの効果について解説してみたいと思います。
効果①:がん抑制の効果
上述した通り、「抗酸化作用とがん抑制効果」については一貫性がなく、現状では「効く」ともいえるし「効かない」ともいえます。
ここで重要なのは「内因性」か「外因性」かの違い。多くの場合、抗酸化作用といえば「外因性」を指しており、主に食べ物から摂取した場面を想定しています。
一方で、「内因性」の抗酸化作用を働かすことができれば、がんを抑制することが可能です。
そのためにできることは、国立がん研究センターが発表している「がん予防の5つの健康習慣」を守ることです。すべての人におすすめの方法となります。
効果②:動脈硬化の予防
上記の「がん抑制の効果」と同様で、外因性の抗酸化物質が直接的にアテローム性動脈硬化を予防できるというようなエビデンスは存在しません。
しかし、食事性抗酸化物質がLDLコレステロールなどを改善することで間接的に生じる効果は期待さてれています。
ところが、「予防」とまではいえず、観察研究によってリスク低減が報告されている程度であることには注意が必要です。
現状では、一縷の望みをかけて抗酸化物質を摂取してみることしかできないでしょう。よって、一般的な生活習慣改善法をみんなで実践しておくのが最も効果的であるといえます。
効果③:老化の抑制
酸化ダメージが老化を促進させるのは有名な話で、いくつもの研究で酸化ストレスが身体の炎症・代謝異常・心臓血管へのダメージ・サーチュインの阻害などといった問題を報告しています。
それにともなって、外因性の抗酸化物質も酸化ストレスの中和に役立つデータもみられます。
しかし、それらの有効な証拠は、「栄養状態が悪いこと」や「肥満や疾患による悪影響が大きい」場合に限られてしまい、健康な人が抗酸化物質を摂取して効果があるかは不明です。
ですが、若いうちからさまざまな栄養をとり、健康的な生活習慣を手に入れることには効果がありますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
抗酸化サプリメントもがん抑制に効果ある?
上記の「抗酸化作用はがん抑制の効果がある?」でも記述した通り、抗酸化サプリでがんを抑制できるという事実はありません。
アメリカがん協会が2020年に提出したガイドラインでも、「抗酸化物質の摂取」の記載はなく、不健康な食事の排除と健康的な食事、体重の維持、運動、禁酒、他者交流がメインとなっています。
そうはいっても藁にもすがりたい方はいらっしゃると思うので、現状で最も可能性を感じさせてくれそうなものをご紹介しておきます。
まとめ
以上をまとめると、抗酸化作用は「銀の弾」などではなく、ひとつの健康法にすぎないということです。しかしそれは、まだまだ研究が始まったばかりということで証拠の蓄積が少ないことに起因します。
これからの発展に期待をしながら、余裕がある人は外因性の抗酸化物質を積極的にとってみると良いかもしれません。
カロリーオーバーになるほどでは良くないですが、適量を食品から摂取する程度であれば大きなリスクもないため良い選択になると思います。
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