ここでは「抗酸化作用」と「美容・健康効果」についてまとめていきたいと思います。
抗酸化といえば、体が産生する活性酸素を除去して、酸化ダメージを減らしてくれるありがたいものです。ゆえに、抗酸化を亢進させれば病気対策や美容に効果的だと考えられます。
しかし、その考え方は短絡的であり、もっと複雑なメカニズムが働いています。よって、その詳細をエビデンスをもとに解説していこうと思います。
抗酸化の神話に惑わされたくない方は、ぜひお読みください。
抗酸化作用とは?
抗酸化とは、あらゆる物質が酸素との反応により生じた有害事象を減弱させるものの総称ですが、ここでは主に体内で起こる抗酸化作用についてご紹介していきます。
酸素との反応で生じる物質に「活性酸素種(ROS)」というものがあります。これが、身体の抗酸化能を上回ると「酸化ストレス」という悪影響を及ぼします。
活性酸素について
活性酸素(ROS)とは、一般的に4種類あり、フリーラジカルとそうでないものに分かれます。
フリーラジカルとは、対をなしていない電子が1つ以上あるものをいいます。ゆえに、安定していないわけですね。
活性酸素は人間がエネルギーを生み出す過程で生じ、細胞伝達物質や免疫機能として働いています。しかし、これが過度に産生されて、体内の抗酸化能力を上回ると体にダメージを与えてしまうことになります。
現状、この余分な活性酸素がさまざまな病気の原因として考えられています。
老化と抗酸化作用の関係性
抗酸化作用にもさまざまあり、
- 内因性の抗酸化
- 食事などの外因性の抗酸化
- 外用剤としての抗酸化
というように分類できます。
どのような抗酸化であっても酸化ダメージを軽減してくれますが、現状では「健康的な人に効果がある」という証拠は不足しており、老化と抗酸化の関係は不明確です。
しかし、過剰に摂取する、用法用量を守らないようなことがなければ危険性は比較的少ないため、自身の水準に見合ったレベルで使用してみるのは良いと思われます。
抗酸化作用の肌への美容効果とは?
上記でも触れた通り、抗酸化が肌の美容に効くという強固な証拠はありません。しかし、サプリメントなどに頼らず健康な食事や運動を心がけることには意味があります。
ですが、外用剤としての抗酸化物質には効果が確認されているものもあるので、ご紹介したいと思います。
ハリやしわ、たるみの改善
肌のハリ・シワ・たるみに最も効果がある物質は「レチノイド」というビタミンAです。
有名なものに「レチノール」があり、近年ではさまざまな化粧品に使われています。しかしこれは、生理活性が弱く効果が低いため、レチノイン酸の「トレチノイン」を使うのが一般的です。
トレチノインと保湿剤の使用により、シワやたるみなどが改善することがわかっています。
ほとんど誰でも使うことができますが、妊婦さんが使うときには注意が必要ですので、ご使用の際には専門医にご相談ください。特に内服薬の場合は禁忌が多いため自己判断での使用はお控えください。
基本的に使いやすいものなので、気になる方はご検討ください。
シミや黒ずみの改善
シミや黒ずみに対しても「トレチノイン」は効果があるため、使用上の注意を守ってお使いください。
同じく「ハイドロキノン」にもシミや肝斑などを改善する効果があるため、専門医指導のもと使ってみるのが望ましいです。
ここで取り上げておきたいのが「ビタミンC誘導体」で、現状ではシミなどへの効果は期待できず、リン酸アスコルビルナトリウム(APS)がニキビへの効果が示されているのみです。
以上から、シミなどでお悩みの方は専門医に相談しつつ、トレチノインとハイドロキノンを使ってみると良いと思われます。
抗酸化作用の健康効果とは?
「抗酸化をしすぎると癌が悪化する」というメカニズムが2014年に報告されました。
ご存じの通り、体によいものでも摂り過ぎれば害になるものです。では、適量とはなんなのかを考えることにしましょう。
そこで、2つのトピックについて解説していきたいと思います。
生活習慣病の予防
生活習慣病は名前の通り、「生活習慣を改善することで予防できる」ものです。その範囲は広く、2型糖尿病・高血圧・脂質異常・心臓病・脳血管障害などを総称する呼び名です。世界的には「NCDs」でお馴染みですね。
生活習慣の乱れが大きな原因とされるため、習慣の見直しが最重要となります。ゆえに、抗酸化作用との直接的な因果はかなり弱く、自分の生活を振り返り改善していくことが大切です。
あわせて、メンタルなどの精神的な改善も必要になるため、生活習慣病の予防はとても難しいですが、現代において全ての人で対策が必要になります。
免疫機能の改善
冒頭でも触れた通り、抗酸化を極端に行うと活性酸素が減る一方で、免疫が正常に働かずにがん細胞を元気づけてしまう可能性すらあります。
これは、体内で産生された活性酸素があらゆる免疫系に役立つことに由来します。
なので、免疫機能を改善するために抗酸化作用に頼ることは危険です。
繰り返しになりますが、免疫機能を改善する最善手は「生活習慣の改善」であり、一般的に健康に良いとされるものをひとつひとつ積み重ねるしかありません。
地道ではありますが、いわゆる現代病には生物的・進化的なミスマッチを減らすことを念頭に、みんなで頑張るしかありません。
抗酸化作用を高めるには?
繰り返しになりますが、「抗酸化作用を高めること」に執着する必要はありません。よくあるパターンとしては、
- 抗酸化を気にし過ぎるあまり食事が偏り、アレルギーを発症し、慢性的な栄養飢餓状態になる
- 抗酸化を気にし過ぎて、友人や家族などに強要し、関係が崩壊していく
というものがあります。
これはほんの一例ですが、全体のバランスが最重要であることを忘れてはいけません。
ここでは、よくある誤解と生活習慣改善のメリットについて解説してみたと思います。
上記に当てはまる人は気にしてみるといいかもしれません。
抗酸化作用の高い食べ物を摂取する
今のところ「特定の栄養素によって体内の抗酸化作用が高まる」という明確な証拠はありません。
むしろ、単一の栄養素に偏った食べ方は、アレルギーや栄養不足による不調などの原因となりますので、バランスの良い食事が最も抗酸化作用を効率的に働かす方法となります。
同じく、食べ物を使ったスキンケア(きゅうりパック、トマトや麹などを使ったフェイスパックなど)もアレルギーの原因となるため、控えたほうが良いでしょう。
以上を踏まえたうえで抗酸化力が高い栄養素は、カロテノイド・ビタミンC・ビタミンE・フィトケミカルで、ミネラルだと、セレン・亜鉛が主流です。
内因性ですと、グルタチオン・メラトニンとなっております。不摂生が多い人は、気にして摂取してみてもいいかもしれません。
生活習慣を見直す
生活習慣といっても多岐にわたり、食事・運動・睡眠・メンタルを改善とフルコンボです。
しかも、それぞれは一朝一夕ではいかず、ひとつずつ地道に改善していくしかありません。さらに、ワークライフバランスも考慮しなくてはいけないため、より困難を極めます。
ですが、その分の見返りは大きく、あらゆる疾患リスク低下・抗老化・美肌・メンタルの安定といった効果が期待できます。当然、ここで取り上げているような抗酸化能の向上も見込めることでしょう。
健康診断で異常値がある人、かかりつけ医から指摘を受けている人、喫煙者、過剰な飲酒をしがちな人は当然のこと、かたよりのある生活をしている自覚がある人は試す価値が十分にあるでしょう。
ただし、ここでいう健康効果は、適度に酸化ストレスを改善した時の効果です。
まとめ
全体をまとめると、
- 抗酸化作用に固執せず、生活習慣を総合的に見直すことが大事
- 美容効果のある外用剤で、シワやシミなどの悩みは改善できる
ということになります。
厚生労働省が述べている通りで、「フリーラジカルと健康の関係は、以前考えられていたよりもっと複雑である可能性があります。」というのが結論でしょう。
なので、これからの研究に期待しながら、余裕がある人は適量を摂取してみると良いかもしれません。
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